小説– archive –
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第六話 父の気遣い
濡れた制服を着たまま、忌子は教室に戻ることはできずに学校を後にした。体をきれいにしないと、ただそのことだけが頭を支配する。 離れに帰るや否や忌子はすぐに制服を脱ぎ捨て、風呂場で全身を洗い続けた。水が体に当たり、体から流れ落ちる感覚を感... -
第五話 呪い発生
月曜日の朝、目が覚めると全身が気だるい感覚に八乙女忌子は襲われた。土日と神楽を舞った影響はあるかもしれない。しかし、それよりも土曜日に目の当たりにした光景が忌子の脳裏から離れていなかった。血にまみれた男性。それは今すぐにでも救助が必要... -
第四話 まじないと過干渉
田島秀俊はみんなと解散した後、先ほどの出来事を思い出していた。最初に手助けに入った男性は医師だった。観光中にたまたま出くわしたと言っていたが、そんな突然でもあれだけ的確に動けるのは素直にすごいと思う。 彼の指示では想像以上に強く胸を押... -
第三話 急変発生
声が聞こえてきたのは先ほどまで鏑矢を放つ儀式が行われていた拝殿の前の広場からだった。急いで向かうと広場に横たわる人と、それを取り囲むように遠巻きに見る十人ほどの人が見える。駆け寄ると忌子の姿に気づいた女性が声をかけてきた。 「あの! 急... -
第二話 神楽を舞う
忌子は目を覚ますと布団から出て立ち上がる。机の上の時計を見ると五時を過ぎた頃だった。机の奥にあるカーテンを開くと、窓から見える空は雲ひとつなく青みがかっていた。天気予報でも確認していたが祭りの当日の天気が問題なさそうでほっとする。 布... -
第一話 祭りの約束
「キコ! あした、お祭りで踊るのって何時から?」 八乙女の声が聞こえてきた。 「お昼の一時くらいかな。神楽自体はもう少し前から始まるけど、私の出番は少ししてからだから」 指を一本ずつ丁寧に洗いながら、鏡越しに美友紀の顔を見て答える。 「...