小説– archive –
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第十六話 夜中の邂逅
外は暗くなり、時刻は一時を越えていた。離れの居間で忌子たち三人は秀俊のことを待っている。楠本も夜間診療所の仕事が終わったら、その足で離れへと来てくれていた。 「なんでわざわざ夜中に来るんだ」 「それは考えたってわからないって結論が出たじ... -
第十五話 異変
予備校はここから電車で一駅の繁華街の中にある。そのため楠本の運転する車で移動することになった。自分が普段過ごしている世界とは真逆の喧騒の多い世界。繁華街まで足を伸ばしたことがめったにない忌子にとって、ほとんど未知の体験でありこんな状況... -
第十四話 門前払い
「僕はやめた方がいいと思うけど」 楠本が玄関周りを掃除し終えて戻ってきた後、居間で先ほどの方針を伝えると彼は難色を示した。 「どうしてだ?」 仲間が不機嫌な声を出す。 「だって彼に近づくなって警告してるんでしょ」 「それなら近くまでは一緒... -
第十三話 再警告
朝、目が覚め忌子は体を起こした。時計を見ると時刻は普段起きる朝五時を示している。窓から陽の光は差しておらず、カーテンを開けると空は曇り空だった。起きて真っ先に秀俊のことを思う。結局彼が訪ねてくることはなかった。普段、学校ですぐ会えるた... -
第十二話 秀俊の接触
今日来るなんて聞いていない。それにこんな朝早くからなんの用があるというのだろうか。思わず仲間の方を見る。 「とりあえず私が出た方がいいかもしれないな」 そう言って、彼女はインターホンで応答する。 「秀俊くんかい。仲間だがどうしたんだ」 ... -
第十一話 警告文
その後、仲間たちは楠本が迎えに来た車で泊まっているホテルへと戻っていった。帰る前に連絡先として自室の固定電話の番号を伝えておいた。するとしばらくしてから巫女装束はあした朝来るときに持ってくるとわざわざ電話がかかってきた。 秀俊も帰った... -
第十話 呪いの話
忌子たちは龍神川を越えて離れへと向かっていた。日差しが照りつける中、足早に向かう。離れへたどり着いたが忌子はそのまま仲間を家へと招き入れるのは抵抗があった。自分から誘ったにもかかわらず、穢れを家に持ち込んでしまうという思いが浮かんでく... -
第九話 信頼構築
「信頼って呪いがどうこうって話をですか?」 結局この胡散臭い話になるのか。でも目の前にいる彼が霊感商法のようなことをするとは思えない。昨日の診察を受けたときの医師としての姿を思い出して悩む。 「もちろん怪しいのはわかってる。でも何かを売... -
第八話 出会い
病院を受診して離れに戻ると忌子はまたひとりになった。清司も付き添ってくれるかと期待したが、そんなことはなく社務所に戻ってしまった。寂しさを感じつつも、これが今までの日常だったと思い直す。 布団に入っても日中に寝てしまったため眠りにつけ... -
第七話 体調不良
「なんで都内からわざわざこんなところの夜間診療所に?」 楠本が診療所のマニュアルに目を通していると、看護師が後ろから声をかけてきた。 「日中は観光してSNSに投稿、夜間は小児科医として働く。そんなバイトが今はあるんですよ」 そうなんですか...