「自分は世界でたったひとり」という孤独との向き合い方:物語による「野営スキル」

「自分は世界でたったひとり」

このような心境になってしまっても、人生は続いて前に進まなきゃいけない。そんなつらい気持ちになったことはありませんか?

それは、まるで荒野をひとりで歩いているようなものだと思うんです。

今回は「そんな内面世界で生き抜くには野営スキルが必要」ということがテーマです。

ここで言う「内面世界の野営スキル」とは、「物語を通してつながりを生み出す」という方法のこと。

自分の生活に関わる人たちの物語を集めることで、少しでもつながりを作り出し、それをエネルギーに進んでいくというものです。

まずは「内面世界で感じる孤独」について触れたうえで、この「野営スキル」についてお話したいと思います。


目次

内面世界での孤独について

「内面世界での孤独」と表現しているのは、単に周囲に人がいないとか、たったひとりで生きている人だけに孤独が生じるわけではないからです。

仕事をしていても、家族がいても、友人や仲間がいても、自分の心の中でつながりを感じられなければ、孤独な内面世界になってしまいます。

たとえば、自分だけが抱えている悩みがあって、誰にも打ち明けられずにいるとします。そうすると、周りの人に対して本音を隠しているような感覚が生まれ、自分で自分をバリアの中に閉じ込めてしまうことになります。

バリアは自分を守るものでもありますが、同時に周りとのつながりを見えにくくして孤独を感じさせます。

しかも、そうした内面世界での孤独は、外からはなかなか気づかれません。

たとえば、家庭環境の悪さを隠して友達の前では元気そうに振る舞ったり、逆に友達にいじめられていても家族の前では平気な顔をしたりする。

そうすると、本当は孤独を抱えていることに周りの人は気づけないままです。

またこのような孤独は、傍から見てつらい状況の人だけに起こるわけではありません。

一見、周りからは「幸せそう」と思われる状況でも、本人が悩みを打ち明けられなければ同じように孤独を感じてしまいます。

たとえば容姿に恵まれた人が「声をかけられすぎてつらい」という悩みを持っていたとします。その場合は、そのまま話せば自慢と思われるかもしれないし、「そんなのモテないよりいいでしょ」なんて言われるかもしれません。

だから「こんな悩みは持っていないふりをしよう」となってしまう。こうして恵まれたと思える人でも、内面世界での孤独が生まれてしまいます。

結局、「つながりを感じているかどうか」が孤独を左右する大きな要素です。どんな環境であれ、本人がつながりを感じられないと、孤独になってしまうのです。


内面世界での野営スキル

そんな内面世界の孤独に陥ると、生きていくのがとてもつらく感じられます。誰ともつながりを持てないと思うと、世界が急に荒野のような殺風景になるからです。

そこで必要になるのが「野営スキル」。一時的でもいいから、つながりを感じられる方法を手に入れることが大切です。

ここで提案したいのが「物語によるつながり」。リアルな人間関係ほど強いものではないかもしれませんが、だからこそ“取り繕わなくていい”というメリットもあります。そうすると、意外とつながりを感じやすくなるんです。

具体的には、自分の生活に関わっている人たちがどんな思いで仕事をしているか、その物語を知るところから始めるのがおすすめです。

たとえば、自分は家に住んでいるのだから、家を建てる人や設計する人の物語を探してみる。本やネット、YouTubeやテレビなど、どんな情報源でも構いません。

コンビニをよく利用するなら、コンビニ店員さんやオーナーさんの物語を読んでみるのもいいでしょう。

たとえば「コンビニオーナーぎりぎり日記」という本には、日常の大変さやうれしかったことなどが具体的につづられています。そこには「コンビニ店員にはこんな苦労や楽しみがあるんだ」という物語があります。

また、博物館や美術館、動物園などに行くのが好きな人には、NHKの「ザ・バックヤード 知の迷宮の裏側探訪」という番組がおすすめです。普段は表にあまり出てこない裏側の仕事や、そこに関わる人々の思いが紹介されています。

こうして自分の周りを見回してみると、実に多くの人たちが関わっていることに気づきます。 そのような人たちが「なにを考えて、どのような思いで生活をしているのか」そんな物語を集めてみる。

すると自分の生活には、たくさんの人の物語が関わっていることがわかる。そして、そこにつながりが生まれるんです。

このときに自分を取り繕ってはいません。なぜならリアルな自分の生活をもとに生み出したつながりだからです。

もちろん、これは自分自身が勝手に生み出したつながりです。実際にその人たちに会った訳ではないし、相手も自分のことを知りません。

だから強固なつながりではないでしょう。しかし、それでも自分が生きている世界はつながりによって保たれていることがわかります。

このささやかなつながりたちから、エネルギーを少しずつチャージする。

だからこそ「野営スキル」と呼んでいるんです。

心もとないかもしれないし、十分に満足できるものではないかもしれない。しかし荒野に放り出されたときの一時しのぎにはなる。しっかりとしたつながりを得られるまでは、この「野営スキル」でやり過ごすというイメージです。


エネルギーが戻ったら、実際のつながりへ

「つながりが感じられないなら、悩みを共有できるようなコミュニティを新しく探したり、同じような悩みを持つ人たちと出会えばいいんじゃないの?」と思うかもしれません。

もちろん、それは正攻法です。実際に新しい場所に飛び込んだり、ときには国を飛び出してつながりを見つける人もいます。

ただ、これはエネルギーが残っている人が使える手段だとも思います。

孤独が深まるとエネルギーはどんどん失われて、何もできなくなってしまうこともあります。いじめなどでひどく傷ついた経験があると、新たな集団に入る元気さえなくなってしまうことも多いのです。

だからこそ、まずは自分ひとりの内面世界でも、ちょっとだけエネルギーを回復できる「野営」が必要。

まわりに誰もいなくても、ひとりでエネルギーを蓄えられる方法として、この物語を用いたつながりを提案しています。

エネルギーがたまってきたら、そこから少しずつ荒野をさすらい、新しい街(つまり新しいコミュニティやつながり)を探してみればいい。そこで改めて、しっかりとしたつながりを築いていくのでも遅くありません。

物語を使いこなすスキルがこれからの時代には必要

サイトの名前にもつけるくらい「物語」というのを重視しています。

なぜなら物語には大きな力があるからです。ときには毒にもなりうるし、自分や他人を傷つけるリスクさえある。一方で物語をうまく使いこなすスキルがあれば、自分の世界を豊かにしてくれるし、孤独の荒野でも野営しながら前へ進めるようになると思うんです。

次の記事では、この「物語を使いこなすスキル」について、もう少し深く考えていきたいと思います。


まとめ

  • 内面世界での孤独は、周囲に人がいるかどうかとは関係なく、自分がつながりを感じられているかどうかで生まれる。
  • この孤独を感じやすい状態のとき、自分の生活に関わる人の物語を調べてみると、つながりを得られるかもしれない。
  • 「物語によるつながり」はリアルな関係ほど強固じゃないが、自分を取り繕わなくてもいいので、実行しやすい。
  • まずはこの「野営スキル」でエネルギーを回復し、元気が出てきたら新たなコミュニティやつながりを探してみる。

物語をうまく活用して、孤独なときには野営しながら進んでいく。そんなちょっとしたつながりが、ときには荒野のように感じる人生の道のりを少し進みやすくしてくれるのではないでしょうか。 

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